「彼女がいるのに、別の人を好きになってしまった…」
この一文を胸の内に抱えたとき、あなたはどんな気持ちだったでしょうか。罪悪感、混乱、そして自分自身への失望—さまざまな感情が押し寄せてきたことでしょう。心の中で「自分はひどい人間なのか」「二股をかけているのか」という問いと向き合わざるを得なくなり、毎日がモヤモヤとした気持ちで満たされます。
でも、少し落ち着いて考えてみてください。人の感情は、時に理性の制御を超えて動き出すもの。好きになるという気持ちそのものは、必ずしも意図的に生じるわけではありません。大切なのは、その後あなたがどう行動するかです。
この記事では、彼女がいるのに別の好きな人ができてしまった時の心理や対処法を、実際の体験談を交えながら探っていきます。あなたの心に少しでも整理のヒントが生まれることを願って。
心の迷宮:なぜ彼女がいるのに他の人を好きになるのか
まず理解すべきなのは、パートナーがいても他の人に惹かれることは、珍しいことではないという事実です。恋愛心理学の研究によれば、長期的な関係にある人の約70%が、一度は別の相手に魅力を感じた経験があるといいます。では、なぜそのような感情が生じるのでしょうか。
新鮮さへの渇望
人間の脳は、新しい刺激に強く反応する傾向があります。恋愛関係が長く続くと、初期の頃に感じていたドキドキ感や高揚感が徐々に落ち着いていきます。これは関係が深まり、安定した証拠でもあるのですが、無意識のうちに新鮮な刺激を求める気持ちが生まれることもあるのです。
32歳のシステムエンジニア、健太さんはこう振り返ります。「5年付き合っている彼女がいましたが、新しく部署に配属された同僚に何故か心惹かれていきました。後から考えると、彼女との関係が『当たり前』になっていて、新しい人との会話に新鮮さを感じていたんだと思います」
欠落の補完
現在のパートナーとの関係で満たされていない何かを、新しい相手に見出すことも少なくありません。それは知的な刺激かもしれませんし、感情的な共感かもしれません。または単に「聞いてもらえる」という体験かもしれないのです。
29歳の看護師、美咲さんの体験はこうです。「彼氏とは3年の付き合いでしたが、彼は私の話をあまり聞いてくれませんでした。そんな時、患者さんの家族で毎日お見舞いに来る方がいて、その方は私の些細な話にも興味を持って聞いてくれたんです。気づいたら、会うのが楽しみになっていました」
理想と現実のギャップ
初期の恋愛では、相手を理想化する傾向があります。しかし、時間が経つにつれて相手の現実の姿が見えてくると、「こんなはずじゃなかった」という気持ちが生まれることも。そして新しく出会った人に、再び理想を投影してしまうのです。
27歳の会社員、直樹さんは「彼女とは同棲していたのですが、生活の中で彼女の整理整頓が苦手な面や、細かいことにこだわる面が見えてきて。一方、趣味のテニスサークルで知り合った女性は、いつも明るくて大らかで…。でも実際に付き合ったらきっと同じことの繰り返しなんだろうなと、今は分かります」と語ります。
リアルストーリー:彼女がいながら他の人を好きになった3つのケース
実際に彼女がいながら他の人を好きになってしまった方々の体験から、その後どのような道を選んだのか、そしてその結果はどうだったのかを見ていきましょう。
ケース1:「一時的な感情」と向き合い、現在の関係を見つめ直した太郎さん
34歳の公務員、太郎さんは5年間の付き合いがある彼女と同棲中、仕事で関わった取引先の女性に強く惹かれてしまいました。
「最初は単なる仕事上の好感だと思っていたんです。でも次第に、彼女のことを考える時間が増えていって…。連絡先を交換して、業務連絡という名目でLINEのやり取りも増えていきました。その頃、同棲中の彼女とは日常の小さなことでイライラすることが増えていて、比較してしまっていたんです」
葛藤の末、太郎さんは友人に相談しました。友人からは「新しい人に惹かれるのは、今の関係に何か足りないものがあるからかもしれない。だからといって、今の関係を捨てる必要はないかもしれないよ」とアドバイスを受けました。
「その言葉をきっかけに、自分と彼女の関係を見つめ直しました。日常に追われて、お互いを思いやる気持ちや感謝を伝えることが減っていたんです。彼女と改めて向き合い、二人の時間を大切にするよう意識しました」
太郎さんは、取引先の女性とは適切な距離を保ちつつ、彼女との関係修復に努めました。デートの頻度を増やし、お互いの気持ちを伝え合う時間を作ったそうです。
「今思えば、取引先の女性に感じた気持ちは、彼女との関係を見直すきっかけになったと思います。あれから1年以上経ちましたが、今は彼女と結婚を考えています。一時的な感情に流されず、丁寧に向き合って良かったです」
ケース2:「本物の気持ち」を認め、誠実に別れを選んだ香織さん
31歳のデザイナー、香織さんは3年間交際していた彼氏がいる中、仕事仲間の男性と徐々に親しくなり、自分の気持ちに気づくことになりました。
「彼氏とは将来の話もしていましたが、どこか物足りなさを感じていました。そんな時、仕事で一緒になった彼と価値観や将来の夢について話すうちに、『この人となら一緒に成長していけるかも』と思うようになったんです。彼氏とは安定していましたが、刺激や成長という面で違いを感じていました」
香織さんは1ヶ月ほど悩み続けた後、彼氏と話し合いの時間を持ちました。
「本当に辛かったです。彼は何も悪くないのに、私の気持ちが変わってしまった。誰のせいでもないのが、余計に苦しかった。でも、この気持ちを抱えたまま関係を続けるのは、彼にも失礼だと思いました」
別れの話し合いは穏やかに進みましたが、お互いに涙したそうです。別れた後、香織さんはしばらく時間を置いてから、仕事仲間だった男性に自分の気持ちを伝えました。
「別れた直後に新しい恋愛を始めるのは、前の彼に対しても失礼だと思ったので、3ヶ月ほど時間を置きました。今では彼と付き合って2年になります。苦しい決断でしたが、誠実に向き合えた結果、今は幸せです」
ケース3:「関係の危機」をきっかけに、パートナーシップを再構築した哲也さん
37歳の会社経営者、哲也さんは結婚7年目の妻がいる中、仕事で海外出張した際に現地スタッフの女性に強く惹かれるようになりました。
「妻とは子育てと仕事に追われる日々で、夫婦というより『家事と育児のパートナー』になっていました。そんな時、海外出張で出会った彼女は私の仕事を理解し、尊敬してくれている様子。彼女と話すと、失っていた自分の価値を取り戻せるような気がしたんです」
帰国後も連絡を取り続けていた哲也さんでしたが、ある日妻にメッセージを見られてしまいました。
「妻は泣きながら『私たちはどうなるの?』と聞いてきました。その顔を見た瞬間、自分が何をしようとしていたのか、はっと気づいたんです。家族を失うことへの恐れより、妻を傷つけていることへの罪悪感のほうが大きかった」
危機感を抱いた二人は、カウンセリングを受けることにしました。そこで、互いのコミュニケーション不足や、日常に埋もれていた感情に向き合うことになったのです。
「カウンセリングで、自分が認められたい、評価されたいという気持ちが強かったことに気づきました。妻も同じように、母親としてだけでなく一人の女性として見てほしいと思っていたことを知って…。お互いに求めているものが分かった時、関係を修復するきっかけになりました」
哲也さんは海外の女性との連絡を絶ち、妻との関係再構築に努めました。デートの時間を作り、お互いの気持ちや欲求を素直に話す習慣を身につけたそうです。
「あの出来事から2年経ちましたが、今では夫婦関係が危機に陥る前より深い絆で結ばれていると感じます。一時の感情に流されず、長年築いてきた関係を守る選択ができて本当に良かったです」
彼女がいるのに別の人を好きになったとき:自己分析のための7つの問い
他の人を好きになってしまったとき、まず必要なのは自己分析です。以下の問いかけを自分自身に投げかけてみることで、その感情の正体が見えてくるかもしれません。
1. この感情は「新鮮さ」に対するものか?
新しい出会いや関係性の初期段階は、ドーパミンという脳内物質が多く分泌され、高揚感をもたらします。今の関係が長く続いているなら、単に「新しい」という要素に反応しているだけかもしれません。新鮮さは時間とともに必ず薄れていくものだということを覚えておきましょう。
2. 現在の関係に満たされていない部分はあるか?
新しい人に惹かれる理由の一つに、現在の関係で満たされていないニーズがあります。それは「話を聞いてもらえない」「尊重されていない」「情熱が足りない」など様々です。今の関係で何が足りないと感じているか、正直に向き合ってみましょう。
3. 理想化していないか?
新しく出会った人の良い面ばかりを見て、理想化していないでしょうか。一方で現在のパートナーの短所ばかりに目が行っていないでしょうか。公平な比較ができていないと、判断を誤る原因になります。
4. 日常のストレスから逃れたいだけではないか?
時に新しい恋愛感情は、現実の問題から目を背けるための「逃避」として機能することがあります。仕事や人間関係のストレス、あるいは現在の関係の問題から「逃げたい」という気持ちが、新しい恋への憧れに変換されることもあります。
5. 自分は何を大切にしたいのか?
「楽しさ」「安定」「成長」「情熱」—人によって恋愛に求めるものは異なります。長期的な視点で自分が本当に大切にしたい価値は何か、考えてみましょう。それは今の関係で得られるものでしょうか、それとも新しい関係に見出しているものでしょうか。
6. これまでに築いた関係の価値は?
現在のパートナーとの間に築いてきた思い出、信頼関係、共有体験の価値を考えてみましょう。それらは新しい関係では簡単に得られないものかもしれません。失うものの大きさも、冷静に評価することが大切です。
7. 自分は誰を傷つけたくないか?
最終的な決断をするとき、誰を傷つけたくないかという視点も重要です。パートナーの気持ちを第一に考えるべきか、それとも自分自身の幸せを優先すべきか。どちらが正解ということはなく、自分の価値観と向き合う必要があります。
彼女がいるのに他の人を好きになったとき:行動指針
自己分析をした後は、どのような行動を取るべきか考える段階です。状況によって最適な選択肢は異なりますが、以下の指針が参考になるでしょう。
関係を修復したい場合
現在の関係を大切にしたいと考えるなら、以下のステップが効果的です。
1. 距離を置く
まず、好意を感じている相手との接触を最小限に抑えることが重要です。職場など避けられない場面では、プロフェッショナルな関係を維持しつつ、それ以上の個人的な交流は控えましょう。
2. 現在の関係の問題点に向き合う
パートナーとの関係で不満や問題を感じているなら、それを話し合いの場に持ち出すことが大切です。批判や非難ではなく、「私はこう感じている」という自分の気持ちを伝える「I(アイ)メッセージ」を使うとよいでしょう。
3. 新しい刺激を取り入れる
長期の関係ではマンネリ化を防ぐ工夫が必要です。新しいデートスポットを探したり、一緒に新しい趣味にチャレンジしたり、旅行に行ったりすることで、関係に新鮮さを取り戻しましょう。
4. 専門家の助けを借りる
問題が深刻な場合や、自分たちだけでは解決が難しい場合は、カウンセラーなど第三者の助けを借りることも検討してみてください。専門的な視点からアドバイスをもらうことで、新たな気づきが得られることもあります。
新しい関係を選ぶ場合
長い葛藤の末、新しい関係を選ぶという決断に至った場合は、以下のことを心がけましょう。
1. 誠実に別れる
現在のパートナーとは、できるだけ誠実に向き合って別れを告げるべきです。第三者が原因であることを告げるかどうかは状況によりますが、いずれにせよ相手を責めるのではなく、自分の気持ちの変化として伝えることが大切です。
2. 期間を置く
別れた直後に新しい恋愛を始めることは、前のパートナーを更に傷つける可能性があります。また、自分自身の気持ちを整理するためにも、ある程度の期間を置くことをおすすめします。
3. 過去の反省を活かす
新しい関係では、前の関係で感じた問題点を繰り返さないよう意識しましょう。「逃げ」の恋愛ではなく、健全で建設的な関係構築を目指すことが大切です。
まとめ:どんな選択をするにしても、誠実さを忘れずに
彼女がいながら他の人を好きになってしまうという状況は、誰にでも起こり得ることです。重要なのは、その後どう行動するかという選択です。
心理学者は「愛には3つの要素がある」と言います。それは「親密さ」「情熱」「コミットメント」です。長期の関係では「情熱」が薄れがちになり、新しい出会いではこの「情熱」が強く感じられるもの。しかし、本当に持続する関係には3つのバランスが必要なのです。
どのような選択をするにしても、自分自身と相手の双方に対して誠実であることが最も大切です。一時的な感情に流されず、自分の内面と向き合い、責任ある決断をすることで、結果的には自分も相手も幸せになれる道が開けるでしょう。
心の声に耳を傾けながらも、衝動的な行動は避けること。そして何より、関わるすべての人の尊厳を守るという姿勢を忘れないでください。その誠実な態度こそが、どんな困難な状況も乗り越える力になるのです。